ちょっと、書くのをためらった。
ただ、監督が淡々と撮っているから、自分も淡々と書こう。
『ひまわりと子犬の7日間』という実話を元にした映画の試写会に誘われたので、見に行ってきた。
監督は、山田洋次監督のもとで20年間助監督を務めた平松恵美子さん。
主演は…まあ、そんなことは、サイトに行けばいいから良いとして。
主人公は、動物園の飼育係をしていたが、8年前の動物園の閉鎖に伴い転職した男やもめ。小5の娘と小1の息子がいる。妻も動物園の飼育係だったが、5年前に事故で亡くなっている。
そして、主人公の転職先は「保健所」…保健所の仕事は3ヶ月ターンで回っており、2ヶ月は事務仕事をし、1ヶ月は犬の収容所で仕事をする。
収容された犬たちは、7日間で殺処分となる。それがしのびなくて、主人公は娘にも頼んで里親探しをしてもらい、里親が見つかりそうな犬たちを期限が過ぎても延命させたりしている。
上司はそれをよく思っておらず、何かにつけて叱りつける。
「市民の税金でやっていることなんだから、市民からの理解が得られないとこの施設自体の存続も危ぶまれる。だから、予算内で足りるように、期限が来たら殺処分するように」
主人公の娘は、父親は「引き取り手のない犬たちの里親をさがしている、犬たちの味方の仕事」をしていると思っている。当然、真実を知ることになるのだが…。
さて、もう「一人」の主人公のことを忘れてはいけない。それは、「ひまわり」である。
この名前がどこで出てくるかも注目すべき点だが、とにかく、主人公の犬の名前は「ひまわり」である。この犬の怒りの表情をどうやって引き出したのか…それが気になった。悲しそうなふりはできるけど、怒りは難しい。犬は、遊びが好きだから、仕事を「遊び」と認識させれば、サーカスで芸もできるし、ドラマで演技もできる。でも、怒りは…これだけはCGなんじゃないかなぁ…などと邪推してしまった。
さて、話をもとに戻して、映画の冒頭、彼女の生い立ちが全くセリフなしに投影されていく。そう、セリフがないのだ。夏八木勲さんという、名優を使っていながら。
そして、この映画が実話を元にしているということからすると、犬がしゃべるわけないのだから、この冒頭のシーンは…。
さて、堺雅人さんは、安定の演技力。笑ってるようで、実は笑ってない、「武士の家計簿」で発揮されたあの淡々とした感じで、物語の大半は進んでいく。
オードリーの若林さんも、いい味出している。映画初出演とは思えない、自然な、ごく普通にそこら辺にいる若手職員を演じている。もう、演技だか何だか分からないくらい自然。
もちろん、娘役の近藤里沙ちゃんも素晴らしかった。彼女がいたからこその映画だったのかなぁ…と。
この映画は、声高に何かを訴えるような、そんなものではない。ただ、現実を淡々と見せ、考えさせるものになっている。
里子として救われた命もあれば、その7倍もの命は殺処分を受ける。そんな事実を淡々と。
『遙かなる山の呼び声』でも感じたのだけれど、淡々としているからこそ、クライマックスが際立つ。冗長に思えても、彼らの最後を見届けてほしい…そう願わざるをえない映画だった。
さて、ちょっと気になったことを。
まず、「3匹」の可愛らしい子犬が出てくるけれど、惑わされてはいけない。
それから、「7日間」とタイトルについているけれど、これにも惑わされてはいけない。一般的に7日間であるということを印象づけるために入れ込んだ単語なのかなぁ…という感じ。
でも、そんなことはどうでもいいので、そういう現実が世の中にはあるんだよ、ということで、この映画を見ている時くらいは、彼らのために涙してもいいんじゃないかなぁ〜と思った。
で!き!れ!ば!
安易に動物を「買える」ペットショップなんかなくなっちゃえばいいのに、とかは思ったりしたり、動物を飼うときに、資格制度にしてほしいよなぁ…とかは思ったりするけどね。無駄にブリーディングするより、今ある生命を大切にしようよ、などと考えたり考えなかったり。
そんなわけで、賑やかすぎるストーリーに疲れた方にはお薦めの映画です。
それから、えーと…ニーソが見られます、ニーソが…ボソッ
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